腹壁の筋機能

 それぞれの腹壁の筋は多くの働きをしますが、ほとんどの場合、ほかの筋群(例えば背筋や殿筋、横隔膜など)との協調運動によって機能します。腹壁の筋の主要な働きは以下のようになります。

・腹部の緊張の維持:腹壁の緊張を高め、腹部内臓に圧を加える(腹圧負荷)

・脊椎の安定化と脊柱の負荷の軽減

・体幹及び骨盤の運動

・呼吸運動の補助など

 

①腹圧負荷=腹壁や骨盤底筋、横隔膜の緊張による腹腔内圧の上昇

 腹腔と骨盤腔の壁は骨性の構造物(脊柱、胸郭、骨盤)と筋(横隔膜、腹壁の筋、骨盤底の筋)から構成されています。

 腹部の筋が収縮すると(腹圧負荷)腹腔の容積が減少し、腹腔内圧の上昇によって腹部内臓が締め付けられることになり、この作用は例えば直腸から便を排出する(排便)。尿を膀胱から放出する(排尿)、胃内容物を空にする(嘔吐)などの運動に重要な意味をもっています。また、腹圧負荷は分娩の娩出期母体のいきみにとっても必須な運動です。

 

②脊柱の安定化

 上記の腹圧負荷が生じることで流体静力学的効果により体幹は安定し、脊柱(特に腰椎域)への負荷が軽減されるとともに、体幹壁は空気が充満したボールのように硬くなります。重いものを持ち上げるような時には、自動的にこの運動が行われています。こうしてできた体幹の空気の圧力空間は上位腰椎の椎間板にかかる力を50%まで、下位腰椎でもおよそ30%まで軽減することができるといわれています。同時に固有背筋の発揮する力も50%以上軽減されます。このことは腹壁を良い状態に保つことが脊柱の予防と治療にとって重要であることが分かります。

 

③骨盤運動への腹壁の筋作用

 固有背筋と腹壁筋の均衡が崩れると、特に下位脊柱の弯曲と骨盤傾斜角度が明らかな影響を受けます。正常の能動的な立位では骨盤はおよそ12度前傾しています。この状態から腹部の緊張を高めると(腹が引っ込まり、胸を張る姿勢)骨盤は通常よりも直立した状態となり、上前腸骨棘と上後腸骨棘の高さが同じになります。逆に腹壁の筋緊張が低下すると骨盤は過度に前傾し下部脊柱の前弯の強調や固有背筋の短縮が目立つようになります。この姿勢は腸腰筋が短縮することで更に強調されます。

 

 リハビリをしていると、腹圧が低下している方を多くみます。リハビリの中ではコアの賦活を図りますが、マルアライメントによって生活上、内腹側系のダウンレギュレーションが働きやすくなっている場合は、インソールなど環境の変化も必要かと思われます。